2021/02/26 00:41

加速度的に進む時代と、それを必死に追いかける小さな居酒屋の挑戦。


当店は湘南藤沢にある小さな個人店の居酒屋だ。

自営で独立して早12年がたった。 時代も12年たてば随分とかわるもの。私が独立した2009年は

iphone 3gsが発売されスマホ時代の幕開けだった。翌年にはあの衝撃的なプレゼンと共にipadも

登場し、ミーハーな私はもちろんiphone,ipadどちらも購入し店で使えないかといろいろと試行錯

誤していた。

当時は今ほどアプリなどの性能は高くはなかったが、新しい技術のおかげで『きっといつか飲食

業界もかわっていくのだろうな』と漠然ではあるがハイテクな未来を想像していた。

またこの頃からまったくの未経験分野ではあるが友人のSE,デザイナー夫婦からAdobeのillustrator

を貰ったことを切っ掛けに店舗のメニュー制作を自分で行ってみることにした。 

現在のようなサブスク系ではない単品売りの高価なソフトなので機能も多く理解不能ながらも当時

の少ない情報を頼りに手探りでメニューやポップを作っていた。

もちろんプロが作るような見やすくカッコいいデザインなど作れるわけもないが、お客さんに

『このメニュー店長が作ってるの?』『すごいね!』と言ってもらえるのが純粋に嬉しくて夢中に

なっていった。

そのため当時の店のメニュー変更頻度はたぶん日本一だろう。

そんな開業当時から新し物好きが功を奏し、当店は何か新しいものが出るたびになにかとちょっかい

を出してきたおかげでなにかと便利なサービスにお世話になっているわけだ。


衝撃的だった『airレジ』の登場



昔はとても高価で個人店で導入などできなかったPOSシステムのレジ。当然ながら当店もそんな高価な

ものは買えるはずもなく手書き伝票と手打ちのレジを使っていた。 なんともアナログな方法で日々の

業務を行っていた。

しかし2019年の税率改正と共に軽減税率が導入されるタイミングでairレジが普及することになった。

それもそのはずだ。

助成金も出るわけだし、なんならipadの代金まで助成金対象。しかも50%もである。 

ただでさえ値引きがされない高級品apple製品が半額で手に入るわけだ。おまけにこの当時は『ipad pro』

が登場したタイミングでもあったため、新しいipad欲しさにこのairレジなるものを使わない手はないと

思ったのは言うまでもない。

しかしそんな物欲をも超える衝撃がairレジにはあった。 POS管理はもちろんのこと、予約管理、予約

とレジの連動、売上管理商品管理がとにかく管理しやすく、しかも簡単なわけである。 

まさに技術の勝利。

いままでどれだけ苦労してきたことか。 紙の管理からだいぶ解放されこのころから遂に長年ダイソーで

買っていた予約ノートに別れを告げる運びとなったわけだ。


コロナが変えた飲食業界の新たな形




2020年から始まったコロナのパンデミックは今までの飲食業界の形そのものを変えてしまった。 

今までのように仕事終わりに飲みに行こうという当たり前のことが出来なくなってしまったために我々

飲食業界もなにか新しいことを始めなければ商売が立ちいかなくなってしまう。 そんな飲食業界に

彗星の如く現れた救世主がいた。

ご存じ『UberEats』である。

この仕組みの凄さは皆さん知っての通りであるが、もう少し我々目線で見るとまた違った凄さがあるのだ。

今までの飲食店は当然、お店がそこに存在する。お店にお客さんが行って、そこで飲食をする。 

当たり前だ。

しかしUberEatsはその当たり前をものの見事にぶち壊したのである。

『ゴーストレストラン』という言葉をご存じだろうか?

これは客席を持たないデリバリーやテイクアウト営業のみを行う新しい飲食店なのだ。

一般的なピザチェーンなどもデリバリーやテイクアウトのみ行うが、ゴーストレストランは既存の飲食店が

本来掲げている店舗とは全く異なる商材、店名でデリバリー業務を既存店のみで行う点が決定的な違いなのだ。

上記の画像は当店『百萬馬力商店』が経営するデリバリー業態で使用するタブレットたちなのだが、よく

見ると当店と異なる店名が書いてあるのがわかるだろう。 

これは当店の1つのキッチンで3業態営業しているということだ。

ひとつは『牛タン専門店 タン治郎』さらには『海南鶏飯 南風食堂』。

馬刺し居酒屋のキッチンで牛タン屋、さらにはもっと遠いジャンルのシンガポールチキンライス店も稼働

しているのだ。

なので現在当店のキッチンにはレジ用のipadが1台と、UberEats用のタブレットが3台の合計4台が整然と

並ぶハイテクキッチンへと変貌を遂げたのだ。

このように時代の変化と共に飲食店も常に変化をしていくのだ。



それでも変わらない、変わってはいけないこと。

時代の変化で人々の暮らしは大きく変わっていくもの。より便利で快適になっていくのは間違いない。

しかし、こと飲食店がもっとも普遍的に変わらないものもある。

『もてなしの心』である。

そもそも飲食店は美味しいものを提供するのが仕事ではあるが、その本質はお客さんの『美味しい』の声や

『楽しかった』の体験であり、それを共感しさらなるお客さんの喜びを生み出すことである。

どんなにハイテク化していく未来であろうと、きっと人の喜びや感動を生み出せるのもまた人で

あると思う。

どうすれば喜んでくれるか、どうしたら感動的な体験を提供できるか。 

これはきっとAIがどんなに発達しても到底マネできるものではないはずだ。 

将来的に超スーパーなAIが開発されようとも、馬刺しに対する情熱は当店の足元にも及ばない。

それは『美味しい馬刺し体験をしてもらいたい』という揺るがない百萬馬力商店のプライドだから。

一人でも多くの方が美味しく楽しい馬刺し体験が出来るようこれからも時にハイテクに、時に情熱的に

努めて参ります。

Enjoy Basashi Life!